今井了介さんインタビュー

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2019.10.29

今井了介さんインタビュー

「ごちめし」アプリの発案者であり、総合プロデューサーの音楽家・今井了介さんに、アプリ開発のきっかけや実際にどのようなシーンで利用しているのかを教えていただいた。


−−なぜ音楽をやっている今井さんが、「ごちめし」アプリを作ろうと思われたのでしょうか?

 

僕は音楽制作を20年以上やってきたのですが、自分が作った音楽を聴いて目の前にいる何万という人々が涙を流す現場に立ち会ったり、TwitterなどSNSでどんどん拡散されていく様子を体験したり、“音楽の力”というものをこれまでいくつも実感させていただいていたんですね。

 

でも、2011年3月11日「東日本大震災」のあの日、緊急支援が必要なときに何もできないというか、音楽家って弱い存在だと思ったんです。音楽家でありながらも衣食住にまつわる何かの手段を持って、それを被災された方々に提供できれば。困っている人たちのために、何かお手伝いできるようになりたかったんです。

 

例えば飲食店をやっている方が被災地に炊き出しに行かれたり、洋服を取り扱っている方が洋服を届けるとか。何か衣食住にまつわるもので自分が誰かのために何かできたら、ずっとそう思っていました。

 

音楽って「食べ物がない」「寒い」「家がない」「移動手段がなくなった」という人たちの生きるための深刻な課題について何も手伝えない。音楽家が、そういった課題を持っている人たちのために直ぐにできること、手伝えることが何かないかとずっと思っていました。


−−その想いを具現化するきっかけが何かあったのでしょうか?

 

僕ら音楽家の仕事って、ショップやレストランをどこか一箇所にオープンさせるというよりは、わずかばかりですが自分の作った曲を喜んで聴いていただける人が少しずつだったとしても、あちこちにいてくれることによって音楽家は生活が成り立っているんですね。それと同じように、みんなが少しずつハッピーなっていける世界があるといいなと思っていた時に見つけたのがイタリアで「サスペンデッドコーヒー」と言われるコーヒー代が払えない誰かのために先にコーヒー代を払っておく“保留コーヒー”の話や、北海道・帯広の食堂「結(ゆい)」の本間さんという方が取り組まれていた「ゴチメシ」だったんです。


−−その北海道の食堂「結」さんが取り組まれている「ゴチメシ」とはどのようなものなのでしょうか?

 

本間さんの「ゴチメシ」は、帯広の豊かな食材を地元の子供達に食べて欲しくて考えられたサービス。「結」にごはん食べに来た誰かが、子供達のために先にメニューのお金を払ってあげるというものです。例えば一杯400円のうどんを食べた人が、お会計をする際に自分が食べたうどんの代金400円にプラスして、「もう一杯分を払っておくから誰かに食べさせて」と合計800円を支払う。すると下校時にお店にやってきた育ち盛りの子供達が「タダで食べられるなら食べたい!」と先払いしてある分でうどんを一杯食べられる。そういう利他の考え方に共感して、実際にその目で見たくて帯広まで行きました。でも、400円のうどんを一杯ごちそうするのに、飛行機代など交通費だけで往復で4万円くらいかかるんです(笑)。そこで、アプリを作ってこのサービスを多くの人に届けられないかと思ったんです。


−−確かにアプリなら時間や距離の問題が解決しますね。

 

我々音楽家は東京やニューヨークにいたとしても、音楽配信システムやCDというメディアを使って、全国・全世界の人々に自分たちの作った音楽を届けられるじゃないですか。そういう風に、誰かのために先払いをする「ゴチメシ」というものを、アプリを使って世の中の人に届けられたら。広く考えると、これってみんなが喜んでもらえるという意味で、音楽と同じなんじゃないかと思ったんです。

 

たとえば、遠くで災害で困っている人にアプリを使って何かお食事をお届けするという形で支援ができる。友達のバースデーで自分がその場所にいられなくても「このお酒をみんなで飲んでお祝いしてね」という風にも利用できる。僕にとってはそういうコミュニケーションはすごくいいなと思って。


−−今井さんは「ごちめし」アプリをどんな時に使っていますか?

 

こういう使い方をしたら面白いんじゃないかなと思ったことといえば、「ごめんごち」。先日、とある仕事で「沢山の手間をかけさせたけれど、結果的にそれを途中で頓挫してしまった」という案件があったんです。それで「お手間をかけてごめんね」と、あるお店のブイヤベースとビール2杯を「ごちめし」を使ってゴチったんですよ。そしたら「めちゃ感激しました」と速攻で連絡がありました。そういう風に感謝の言葉に何かもう一つ添えたいなという時に使ったりしています。

 

誰かに花を贈ったり、一緒にお食事に行った時に「今日は僕がおごりますね」、というように「ごちめし」アプリを使って気持ちを表現できたらいいなと思っています。そういうものがむしろ今っぽい、現代的だなと思うんです。様々なシーンで「ごちめし」を活用していただくことで、みんながハッピーになれると嬉しいです。


−−この「ごちめし」でどんな世界を作っていきたいですか?

 

僕は社会に出て25年以上、ずーっと誰かにごちそうをし続けているんですね(笑)。でも、それで嫌な気持ちなったことは一度もなくて。

 

例えば東京に出てきたばかりでお金がない後輩に「仕事頑張れよ」っていう風にして食事をごちそうしたとします。それから時が過ぎて、今度は彼らが成長して同じことを誰かにしている姿を見ることが本当に嬉しいんです。

 

自分が起こした行動で他の誰かが喜んでくれることって、どれだけ幸せかということを「ごちめし」アプリを通じてみんなに少しずつ知っていってもらえたら。そういうサイクルを作ることができればと思っています。


−−お話を聞いて、私もまず誰かにごちってみようと思いました。

 

無理して高価なものをごちそうする必要はないんです。身の丈に合わないことをする必要はなくて、例えばうどん一杯400円、自分が払える額の中でいいと思うんですけれども、誰かへの想いや感謝とか、日頃の「ありがとうございます」「ごめん」とかそういう感情を感じた時に、それらの想いにちょっと添えるものとしてこのアプリを利用していただけたらと考えています

 

「ごちめし」を通して優しさのサイクルがずっと人々の間で繋がっていく。そういう世界観が新しい価値観として世の中の人たちに浸透するといいなぁと思っています。それって音楽の広がり方と一緒だなと思うとこがありますので。


−−「ごめんごち」以外にはどんな使い方をされていますか?

 

友人の誕生日とか、知人のお店の周年パーティで、自分が行けないときなどに利用しています。先日も「ごちめし」に登録していただいている麻布十番「十番右京」の周年の際にお店に行けなそうになかったので「お店のシャンパンをごちっておきますので、当日いらっしゃった皆さんで飲んでください!」という風に自分がお店に行けない場合、「皆さんでどうぞ!」という使い方をすることもありますね。


今井了介さんインタビュー
今井 了介さん/音楽プロデューサー。1999年に手がけたDOUBLEの「Shake」のヒット以降、数多くの作品を生み出す。2016年にはリオデジャネイロオリンピックNHK公式ソング『Hero』(安室奈美恵) を作詞・作曲・プロデュース、2019年にJASRAC賞金賞を受賞。同2019年 Little Glee MonsterによるラグビーワールドカップNHKテーマソング『ECHO』を作詞・作曲・プロデュース。そして、初の書籍となる『さよなら、ヒット曲』を10月28日に刊行。「ごちめし」総合プロデューサー


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