【ごちめし対談・第7回】犬養裕美子×今井了介 目の前の一皿を、よりおいしく味わう方法。

[対談]

2021.05.13

【ごちめし対談・第7回】犬養裕美子×今井了介 目の前の一皿を、よりおいしく味わう方法。

「ごちめし特別対談企画」では、「ごちめし/さきめし」プロデューサーの今井了介が「食」や「ニューノーマル」をテーマにゲストとお話します。

第7回目のゲストは、レストランジャーナリストの犬養裕美子さん。国内外の「食」に精通する犬養さんと、“食べること”やコロナ禍における飲食店のリアルについてお話します。

犬養裕美子さん/レストランジャーナリスト。東京を中心に、地方や海外の食文化・レストランを最前線で取材する。これまでに取材した店は1万5000を超え、世界中のシェフやジャーナリストとも親交が深い。農林水産省顕彰制度・料理マスターズ認定委員、『お客に愛される料理人の秘密 冒険するレストランだけが生き残る』など著書も多数
今井了介/1971年、東京都生まれ。音楽プロデューサー。「ごちめし/さきめし」を運営するGigi株式会社代表。1999年に手がけたDOUBLE「Shake」のヒット以降、安室奈美恵「Hero」やLittle Glee Monster「ECHO」など、多くのアーティストの楽曲・プロデュースを手がける

「ごちめし特別対談企画」第7回・犬養裕美子さん×今井了介

  1. レストランジャーナリストが見た、飲食業界の現状
  2. 食べ物が“デザイン”で見られることへの危機感
  3. レストランジャーナリストになるまで
  4. 食のトレンドセッター、フーディーの存在
  5. 共感を生んだ「ごちめし/さきめし」の価値観
  6. 「レストラン キノシタ」の逸品をいただきます
本日は犬養さんのご案内で、代々木にある「レストラン キノシタ」へ。1996年にオープンしたこちらは、予約の取れない人気店として知られています

レストランジャーナリストが見た、飲食業界の現状。

案内いただいた「レストラン キノシタ」は、木下和彦オーナーシェフによるフランス料理店です。シェフが自ら生産者を訪ねながら選んだ、こだわり食材による丁寧なお料理。「以前は迫力ある料理で押しの一手でしたが、いまは一見穏やか。味わうほどに深い味に引き込まれるのです。こんなにソースが上手だったっけ? と驚くほど!」と犬養さんは話します。さっそく犬養さんおすすめの一品をオーダーしてから、トークがスタート。

今井了介(以下、今井):「新型コロナウイルス(コロナ)が流行りだしてから1年が経ちましたが、飲食店の様子についてはどんな変化を感じていますか?」

犬養裕美子さん(以下、犬養):「はじまりのころはみんな、何をしていいのか分からないという状況で。私たち取材する側も、いま動いていいものかと戸惑いました」

今井:「当時はコロナがどんなものか、まったく見えていませんでしたからね」

犬養:「ただこの1年で、日ごろ忙しくてお疲れだったシェフたちが、また気合いを入れて仕事に向かいはじめたように見えます。ときには止まって落ち着き、自分を見つめ直すことが必要だとも感じましたね。彼らはピンチをチャンスに変えられる力を持っているから」

「レストラン キノシタ」。ランチは2500円〜、ディナーはお決まりの4000円コースのほか、5300円〜(各税抜き)でプリフィックススタイルでも味わえるという、手ごろな価格にも驚きです。そんなシェフの気持ちも、長らくファンを獲得する理由かもしれません/住所:東京都渋谷区代々木3-37-1エステートビル1F、電話:03-3376-5336、営業時間[ ランチ ] 12:00〜15:00(LO 14:00)
[ ディナー] 18:00〜22:30 (LO 21:00)

犬養:「そして、制限があるなかで『いま何ができるだろう?』とみなさん工夫されはじめたと思います」

今井:「テイクアウトをはじめたお店も多かったですよね」

犬養:「ここ『レストラン キノシタ』さんのような人気店の料理をテイクアウトで食べられるのは、うれしくもありますよね。そう思うと、コロナは何もかもが悪いわけではないのかも」

今井:「大変な思いをされていらっしゃる人もいるから不謹慎かもしれないけれど、この状況をチャンスと捉えられるかどうかで、がらっとその先の景色が変わる気がします」

犬養:「コロナ禍前の飲食業界は、正直イケイケの時期だったんです。バブル世代としては懐かしいような。渋谷や銀座に飲食店や商業施設もたくさんできて」

今井:「建て直しや、商業施設のリニューアルも多かったですもんね」

『レストラン キノシタ』のテイクアウトは人気メニュー(フォアグラのテリーヌ、和牛赤ワイン煮など)だけでなく、テイクアウトのみの洋食メニュー(ロールキャベツのクリーム煮)なども。手ごろな値段で、マイホームレストランを楽しめます

犬養:「進んでいるイベントもたくさんあり、飲食店さんは事業的にも拡大していく時期にあった。だから飲食業界としては、いまここで何か起こってしまったら困る状況だったんですね。もちろん他の業界も同じ。音楽業界も、ライブなどが規制されましたよね」

今井:「はい、大変でした…。音楽家って何度か業界の大変革の波にもまれて、ドラスティックな時代の変化に対応してきたところがあるんです。例えばレコードからCDへ、そして配信やサブスクへとプラットフォームが変化していったときだったり…」

犬養:「そうですね」

今井:「世の中の人の聴きかたやお金の払いかたが変わっていくなかで、それを最後に補うのがライブだったんですね。『やっぱり体験は変わらないよね』というのが業界全体の共通認識で、ここ10年ぐらいはどの会社もライブのビジネスに力を入れていた。だからライブが規制されて、みなさん大ダメージを被っている状況でした。飲食業界はどうでしたか?」

犬養:「例えば和食店はおせちのノウハウがあるので、お弁当やテイクアウトをやりましょうとか。すでに持っている自分たちの財産を、どうアレンジして出すか。そのアイデアは新しい料理につながっていきます」

今井:「なるほど」

犬養:「人が集まることに関していろんな制限がありますが、人は食べなければ生きていけません。そして外で食事することは、生きていかなければならないだけではなく“人間としての日々の楽しみ”ですよね」

今井:「世界中の人たちがそうですよね」

犬養:「こうして世界中が同じ悲劇を同時に体験することってそうそうないですよね。補償が出ても、次の月も補償されているわけではないので、そう簡単に安心できません。日本で言えば、お父さんとお母さんでやっているような個人店と、厳しい経営方針のフードビジネスのお店が同じ扱いになっているところは受け入れ難いという雰囲気はありましたね」

今井:「もちろんみなさん大変ですけれど、500店舗を運営している会社だったら、50店舗を閉店して存続できるという選択肢があるじゃないですか。でもおっしゃっていたように自分で作って、お料理を出して、お会計もしている個人店さんはそういった選択肢がない。この状況で何をすればいいんだろう、と困り果てている方も多いですよね」

食べ物が“デザイン”で見られることへの危機感。

犬養:「開店したばかりの若いお店たちも、どうしたらいいかなとすごく困っているんです。この状況が1年半続いているのは相当辛いし、この時期にオープンするのはすごく頑張っているよねと」

今井:「応援したくなりますよね」

犬養:「はい、並大抵なことじゃないので。例えば『レストラン キノシタ』だったらお名前が知られているから、テイクアウトという手段があるし発信もできるけれど、まだ発信するべきものがないお店もあるわけです」

今井:「そうですね」

犬養:「お料理も値段もお店のなかの写真も、どこまで見せていいのか、どこまで見せちゃいけないのか、自分たちでも区別が付かなくて戸惑っているお店がたくさんあります」

「そもそもいまは多くの人が飲食店を起業されているぶん、廃業率もすごく高い仕事だと思うんです」(今井)

犬養:「いわゆるフードビジネスの会社で言うと、以前は1年目で話題になって、3年目で落ち着いて、5年目に『そろそろ業態を変えなきゃ』ってぐらいのペースだったのが、いまは3年で終わりですから。どんどんサイクルが短くなって、話題が1年持たないんです。半年ぐらいでお店が変わらないと」

今井:「ブームが終わるスピードも早くなりましたよね」

犬養:「そうするとお客さんたちも、お店の名前を聞いたことがあるだけで、もう行った気になっちゃっているんですよ。だってインスタでぜんぶ見ているんだもん」

今井:「どんなメニューがあるかなど、情報が上がっていますからね」

犬養:「さっき『音楽も最後は体験』だとおっしゃっていましたが、食に関してはもうスマホのなかで“体験”が終わってしまう。いまはみんな、リアルじゃなくてインスタで食べているんです」

今井:「音楽はリスニングと(会場での)ライブの中間にオンラインライブという存在がありますが、料理はリアルに食べる or 食べていない、どちらかしかないですよね」

犬養:「食べれば味も理解すると思うけど、その味自体は自分の想像の域を出ないから、新しいものでもないし本当に感動しているかも分からない」

今井:「現代っ子たちは特に、そういった感覚がありそうですよね」

犬養:「やっぱり食べなければ分からないと思うんです。“食べる”という行為自体がないと、レストランの楽しみというのも分からないですよね。そしてインスタを撮っている人たちを見ていて一番頭にくるのは、撮ったらもう終わりで見向きもしない。食べずに次のターゲットを探しに行く」

今井:「撮ることが目的になっている人は多いかもしれないですね…」

犬養:「それは味じゃなくて“デザイン”として食べ物を見ているから。インスタ映えしない料理にもおいしい味がちゃんと隠されているのに、見た目で『大したことないね』となってしまったり。味とデザインを分離して考えるのは、一皿に対してすごく失礼な感想だと思ってしまう」

今井:「同感です」

犬養:「一つ一つのお皿のなかには香りや食感など、さまざまな楽しみや魅力が込められているのに、それを形だけで取り出すのは違うし、かわいければいいという問題でもない。“食べること”がもうちょっと精神性の高いものであってほしいなと。それを作るためにどれだけの苦労があるか、って思う」

今井:「みなさんその一皿を作るために、試行錯誤されていますもんね」

「ただの白いご飯でもお水とお米を選んで、何回といで、何を入れてと、何工程にもわたりさまざまなイエス・ノーをクリアしておいしいご飯になるんです」(犬養さん)

犬養:「なのでやっぱり食事や素材、それから作っている人に対するリスペクトは絶対に忘れてはいけない。食材は生きているものですから、命をいただくのがどういうことなのかということも考えてほしい」

レストランジャーナリストになるまで。

今井:「犬養さんはどうして、食というジャンルにフォーカスされることになったんですか?」

養:「単に食べることが好きなんです。そして料理を作っている人が何を考えて作っているかというのがおもしろかったので、『ぴあ』と『angle』から始まって『ぴあmapグルメ』というとっても細かい地図を作っていました」

今井:「僕、学生時代に毎年買っていましたよ!」

犬養:「そうだったんですか! お店選びはぜんぶ私がやっていたから、東京中のお店をチェックして回るのが1年間の仕事だったんです。もう店名を見た瞬間に、『あのお店のおすすめメニューはオムライス』って分かるぐらい覚えていました(笑)」

今井:「それから東京だけじゃなく、地方や海外へも行かれるように?」

犬養:「地方よりは世界に興味があって。ま、単なるミーハーですね。パリ、ニューヨーク、ロンドン、上海、ハノイなど、やっぱり料理は文化ですから、その土地でじっくりと育った味はそこでしか味わえない。そんな料理を味わうことと同時に、世界の最先端のレストランで何が起こっているのか。最新情報を取材することに夢中になりました」

今井:「海外に出ると、改めて日本の良さに気付く瞬間があったりしますよね」

犬養:「そうそう。海外を知ることも大事ですが、同時に知られざる日本の食文化もレポートしなきゃいけないなと感じました。というのも、食のグローバル化が進むことで、新しいテクニックや素材の発見は、以前とは比べものにならないくらい早く世界に行き渡ってしまう。食の未来はそうしたとんがったところではなく、もっと足元にあるのではないかと思い、ここ3、4年は日本の地方を回っています」

今井:「犬養さんが取材されたことは、多くの人の食に対する価値観にも影響していると思います」

犬養:「よく私を辛口の記事を書くと思われている方がいます。確かに一般客と同じようにレストランに行き、その時点でのお店を採点するように記事を書いていたこともありますが、いまは取材をするお店には、まず問題点を直接お話しします」

今井:「お店の方に、ですか?」

犬養:「レストランの紹介記事は、お店の人の話を聞いて原稿を書く。それは一般的に雑誌から波及して、いろんな人たちに『このお店はいいですよ』と伝わる形になるんだけれども、私の場合は取材しながら、いろいろなことが気になる。『この値段じゃ成り立たない、このメニューの書きかたはもっとこうしたほうがいい』など」

今井:「コンサルティングですね」

犬養:「雑誌に書く必要のないことというか」

今井:「その現場を見てみたい!」

犬養:「最終的に、ほとんど原稿に書けないことを話していて。自分の経験から感じた『このお店にはこれが必要だな』『こうしたほうがいいのに』というのを伝えることが、私のできる小さな活動ですね」

「著書にもレストランへの愛情ゆえに、もっとこんな工夫をしたり、切り口を考えたほうがいいんじゃないの、ということがいろんな角度から書かれているなと感じました」(今井)

食のトレンドセッター、フーディーの存在。

犬養:「料理やその楽しみかたが時代によって変わるなかで、いま日本の食文化は海外からすごく注目されています。世界のトップシェフたちは日本の発酵食に興味を持ち、生活のなかの発酵食に注目しています。そのシェフたちの情報源となるのが、“フーディー”と呼ばれる人たち」

今井:「新しいレストランやシェフの新作など、彼らが紹介する役割を担っていますよね」

犬養:「フーディーの存在も、いまの時代の特徴ですよね。おいしい食を求めて世界中を飛び回っている人たち。しかも仕事ではなく、ある意味、趣味」

今井:「はい、趣味の領域ですね」

犬養:「とは言っても、プロである私たちよりも食べている『趣味の人』がいるんです。本業でしっかり稼いで、自由にレストランに行く。彼らの発信する情報や評価は、料理人にとって無視できない存在です。“何々の国の誰々さん”と言ったときに、どこの国のシェフも『ああ、あの人ね』と分かるような人たちが何人もいる。映画にもなりましたよ」

今井:「うんうん」

犬養:「ちょっと羨ましい存在です。ただ私としては、仕事として経験を積み、知識を増やし、少しでもおもしろい原稿に仕上げるために精魂込めてキーボードを叩く地道な作業の連続。そこに愛と真実を込めているつもりです」

「私はずっと個人オーナーのお店さんのことが書きたくて仕事をしています。そこには料理だけではなく、人と人との関係とか、いろんな物語がある。そういうものを深めていけるようなお店が、かっこいいなと思います」(犬養さん)

犬養:「私にとって大事なものを守っていきたいし、コロナ禍で自分の活動も見直さなきゃいけないなと考えています」

共感を生んだ「ごちめし/さきめし」の価値観。

犬養さん:「とはいえ、自分が何をすればいいのかってなかなか難しいですよね。今井さんは『ごちめし/さきめし』として行動を起こされていて、本当にすばらしいなと」

今井:「でも、すごく難しいんです。いまはいろんな人が好きなことを言えるので、人にどう捉えられるかという点でも難しい時代だと実感しています」

犬養:「『ごちめし/さきめし』はいつごろスタートされたんですか?」

今井:「2019年の終わりから人に食事を贈れる『ごちめし』がスタートしました。具体的には、アプリ上でコース料理やお酒の会計を済ませておいて『犬養さん、お誕生日に召し上がってください!』と、贈る相手にLINEやメッセンジャーなどでチケットを送る仕組みです。プレゼントされた人は、ご自身のタイミングでお店に行って食事を楽しんでいただけます」

犬養:「例えば、同時に何人もの人からプレゼントされたらどうすればいいの? 日程は自分で決められる?」

今井:「期限は180日なので、その期間内に行ける日を選ぶことができます」

犬養:「なるほど! それなら結構、予約が取れないようなお店さんにも行きやすくなるのかな」

今井:「予約がなかなか取れないお店は、いま別のサービスを考えています。予約と食事をセットでごちそうできるようなサービスを企画中で」

犬養:「『ごちめし』のほかにも考えていらっしゃるんですね」

今井:「既にいくつか、『ごちめし』から派生したサービスがあります。『ごちめし』のスタートから2ヶ月ちょっと、コロナが来たタイミングで『ごちめし』の機能を利用し、お店に先払いをして応援できる『さきめし』も生まれました」



「ごちめし/さきめし」の登録店舗は、2021年4月時点で約1万5000店舗。47都道府県すべてに、利用できる店舗があります。「分かりやすく言うと、贈り主を自分から自分にすれば『さきめし』、人にプレゼントするときは『ごちめし』です」(今井)

今井:「そして僕たちのサービスは、お店から手数料をいただきません。もともと、ユーザーである僕らは無料で利用できるのに、デリバリーや予約サイトでは飲食店さんがお金を取られすぎじゃないか? という思いがあって」

犬養:「取らなくても成り立つんですか?」

今井:「お中元やお歳暮の送料・のし代のような意味で、ユーザーの方からプラス10%いただいています。その金額が運営側に行くので、お店はクレジットカードの手数料も引かれずにメニューの代金がそのまま入るんですよ」

犬養:「お店側が警戒するようなサービスが増えているなか、有難いお話ですね」

今井:「お客さんにもお店にも喜んでいただいて、地域経済や食文化をも応援していくのが『ごちめし/さきめし』のミッションなので。さらに『さきめし』の次に何ができるかなと考えたときに、登録店で社食として食事ができる『びずめし』もスタートしました」

犬養:「おもしろいですね。反響はどうですか?」

今井:「2月にスタートして、既に200社以上から問い合わせをいただいています! SDGs(エスディージーズ…持続可能な開発目標)的な考えかたで言えば、地域のお店を社食利用することで、企業がサステナブルに地域経済を回すことができる。そういった考えに共感して導入してくださる企業も多くいらっしゃって」

犬養:「やはりお店に負荷がないのは大事なことですよね」

今井:「もともと『ごちめし』を起業するときに、いろんな方から『ぜったいに手数料は取ったほうがいい、儲からないから』って言われたんですが、儲けが半分でも喜んでくれる人が2〜3倍いたら必ず流行るから大丈夫! って言い張ったという経緯もあって。結局、創業するときは銀行から1円も融資が受けられませんでしたが(笑)」

犬養:「それが逆転したのはすごいことですね」

今井:「コロナ禍で世の中のマインドが“奪い合うよりは与え合う”価値観に変わりつつあるから、そういったことも影響しているのかなと思います」

「レストラン キノシタ」の逸品をいただきます。

真空パックのテイクアウトでも楽しめる「和牛赤ワイン煮」(1800円、税抜き)

犬養さん:「この『和牛赤ワイン煮』は、大好きな一皿。木下シェフがずっと作っているメニューなんですが、ソース自体がどんどん綺麗な味になっていて、なんとも言えないおいしさなんです」

今井:「おいしい! 僕もソース作りにトライしたことがありますが、赤ワインソースって本当に大変なんですよね。たくさんのワインを使って、ほんの少ししかできないし」

ほろりと柔らかな和牛と、コクのあるソースの旨味がじんわり重なります
「木下和彦シェフは30歳を過ぎて料理の道に進み『生涯、一料理人として真っ当したい』と公言している。その心の強さも頼もしい」(犬養さん)

犬養:「日によって用意されている“キノシタ特製のまかないカレー”もおいしいんですよ」

今井:「カレーですか!」

犬養:「ニンジンがうまい! と、初めて食べて笑いました。というのも、木下シェフが子供のころ、お母さんが作るカレーには大好きなニンジンが入っていなかった。大人になって自分で作るときは『ニンジンいっぱい!』カレーだと、心に決めていたそう。それが見事、現実になった一皿です」

話に花が咲き、あっという間の1時間でした。犬養さん、ありがとうございました!

今井:「料理はその一皿一皿に、作り手のストーリーが込められているんだなと感じます」

犬養:「はい。食べ物って、人生を語りますね」

時代とともに変化していく“食べること”の価値観。コロナ禍は、食文化やその味わいかたを改めて考え、正すきっかけにもなるのではないでしょうか。

レストラン キノシタ

住所:東京都渋谷区代々木3-37-1エステートビル1F

電話:03-3376-5336

営業時間:[ ランチ ] 12:00〜15:00(LO 14:00)、[ ディナー] 18:00〜22:30 (LO 21:00) ※緊急事態宣言中は営業時間は要確認

定休日:日曜

Text:Wako Kanashiro  Photo:Muneaki Maeda


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